黒手組

audiobook (Unabridged)

By 江戸川 乱歩

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これは私の友人、明智小五郎の手柄話の物語である。

解読不可能な暗号が解決へ導いた事件であった。

私がその事件に出会ったのは、物書きをするため熱海の温泉地へ出向いていた時だ。

世間では「黒手組」と名乗る賊が暴れまわっており、

毎日のように「あの貴族が襲われた」「あの家の令嬢が誘拐された」と新聞記事を賑やかせていた。

その記事のひとつに私の目は奪われた。

そこに書かれていた被害者は私の伯父だったのだ。

伯父の娘、私の従妹にあたる富美子が黒手組に誘拐されたという。

私は急ぎ伯父の家へ向かい話を聞くと、

黒手組からの身代金を支払ったのに富美子は帰ってこないらしい。

私は友人である明智の知恵を借りようと連絡を取ると、明智の方でも黒手組を調べているところであった。

明智は伯父から誘拐された日の富美子のこと、賊に身代金を渡した時のことなど、様々な話を聞き不思議なことに気付いた。

身代金受け渡しの時、賊の足跡がなかったというのだ。

他の者の足跡はあるのに賊の物だけが見当たらない。

そして富美子に届いていた暗号めいた手紙。

これらの謎を明智は見事解き明かすこととなるが、富美子は無事に帰ってくるのか?

黒手組の本当の目的とは?

ひとつの事件に絡まりあういくつもの思惑。

コーヒーの豊かな香りの中、明智の凄さを私は再び目にすることとなった・・・。

江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)

日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。

黒手組